中国のZ.aiが「ZCode」をリリース──AI コーディング市場で欧米企業と直接競争

北京のAI研究所Z.ai(旧Zhipu AI)が6月に、独自の大規模言語モデル「GLM-5.2」向けの開発環境「ZCode」を正式にリリースした。同社が報じられるところによると、このツールは「エージェンティック開発環境」と位置づけられており、Cursor、Claude Code、GitHub Copilot、Google Antigravityといった欧米企業が提供する同類のサービスに対抗する製品だ。

ZCodeはmacOS、Windows、Linuxで無料で利用可能。サブスクリプション収入を「GLM Coding Plan」で得る事業モデルが採用されている。ソースによれば、同プランは月額16.20ドルの「Lite」プランから月額144ドルの「Max」プランまで段階化されており、Anthropic の Claude Code や Cursor の同等プランより「有意に安い」とされている。このような価格設定は、$10億規模に成長したAI コーディングエージェント市場における競争激化を象徴している。

プロジェクト中心の設計、マルチデバイス対応

従来の IDE にAIをチャットサイドバーやオートコンプリート拡張機能として追加するのではなく、ZCodeはエージェント優先の開発環境として設計されていると報じられている。ユーザーが目的を説明すると、エージェントが作業を計画し、ファイルを編集し、チェックを実行し、進捗を確認し、目標達成まで複数の反復を繰り返す──という長期的なタスクに対応する仕様だ。

ソースによると、特に中国市場を念頭に置いた特徴として、WeChat や Feishu といった中国で広く使われるメッセージングアプリから実行中のコーディングエージェントを遠隔で操作できるという。デスクトップだけでなく、スマートフォンからも長時間実行されるタスクの進捗確認と指示追加が可能とのことだ。

GLM-5.2──米国チップを使わない大規模言語モデル

ZCodeは、その開発の中心となる「GLM-5.2」というモデルと切り離して理解できない。ソースによれば、このモデルは744億パラメータの混合エキスパートアーキテクチャであり、100万トークンの文脈長(前世代の5倍)を備えている。報じられるところによると、コーディングタスク向けの公開ベンチマーク「Code Arena」で6月中旬時点で世界第2位にランクされており、最高性能のモデルの一つとされている。

注目すべき点として、このモデルは米国チップを一切使わずに開発されたと報じられている。API料金は入力トークン当たり100万トークンで1.40ドル、出力で4.40ドルとのことで、ソースはこれを「Anthropic の Claude Opus 4.8 と比べて最大82%のコスト削減」と指摘している。

米国の輸出規制がもたらした市場機会

ZCodeのリリースタイミングは、6月中旬に起きた地政学的な出来事と無縁ではない。ソースによると、米国政府が国家安全保障を理由にAnthropicの最新モデル「Claude Fable 5」と「Mythos 5」への外国からのアクセスを禁止する指令を出した。その直後、Z.aiはGLM-5.2をオープンソース(MIT ライセンス)でリリースし、「使用制限なし」と発表したと報じられている。この一連の動きは、開発者コミュニティに衝撃を与え、自ホスト可能なオープンソースモデルへの関心を急速に高めたとみられる。

結果として、Z.aiの企業評価は6月22日にHK$1兆(米ドル換算で約1280億ドル)を超えたと報じられている。この背景には、ZCodeの登場とGLM-5.2のオープンソース化に対する市場の積極的な評価があったと考えられる。

日本企業が検討する際の考慮点

ZCodeの出現は、エンタープライズAI調達にあらたな判断軸をもたらした。ソースは「主権的アクセスリスク(Sovereign Access Risk)」と呼ぶ新しいリスク概念を指摘している。開発者体験やベンチマークスコア、価格設定といった従来の評価項目に加えて、「このツールは明日も動くのか」という根本的な問いが生じるようになったということだ。

ZCodeは「Bring Your Own Key(BYOK)」設定に対応しており、またGLM-5.2はMITライセンスの公開ウェイトを提供しているため、開発チームは自社インフラでモデルをホストして運用できると報じられている。ただし、Z.aiのクラウドAPIを利用する場合は中国法の適用下に置かれるという点は、企業のコンプライアンス評価に際して重要だ。

また、ソースは以下の点を指摘している。ZCodeは現時点でオープンソース化されておらず、Linux対応はベータ段階にとどまっており、セキュリティレビュアーはWeChat や Feishu 経由のリモートタスク実行に伴う認証情報の取扱に注意が必要だと警告している。このような機能拡張に伴う安全性の詳細は、公式ドキュメントや企業への問合せで確認する必要がある。

日本企業にとって、ZCode は低コストで高性能なAIコーディングツールとして魅力的に映る可能性がある。ただし、導入前には地政学的リスク、セキュリティ設定、中国法の適用といった要素を充分に検討することが重要とみられる。

  • 月額16.20ドル~144ドルの複数段階のサブスクリプション方式
  • MIT ライセンスのオープンソースモデルにより自社ホスト可能
  • WeChat、Feishu、Telegram からのリモート操作に対応
  • セキュリティ評価には細心の注意が必要(詳細は公式確認推奨)

日本語対応や国内企業向けサポート体制については、ソースに記載されていない。導入検討の際は、Z.aiの公式サイトや営業窓口で詳細を確認することが推奨される。

参照元:VentureBeat「Z.ai launches ZCode to challenge Cursor, Claude Code and GitHub Copilot in AI coding」